躁状態・軽躁状態で見られる変化
公開日: 最終更新日:2026.08.11
「躁状態・軽躁状態」とはどのような変化か?
「睡眠時間が数時間でも全く眠気を感じず、元気に活動できる」「次々とアイデアが湧いて口数が多くなり、じっとしていられない」「普段なら買わない高額な買い物を思いつきでしてしまう」——ご自身や身近な方にこのような急激な変化が見られませんか?
躁(そう)状態・軽躁状態とは、気分の異常な高揚や活動性の高まりが続く状態(双極性障害など)を指します。最大の特徴は、ご本人が「自分は今すごく調子が良い」「頭が冴えている」と感じるため病気の自覚(病識)を持ちにくい点にあります。決して性格が横柄になったわけでも、わがままになったわけでもなく、脳内の気分調律機能の不調による生理的なサインです。
躁状態・軽躁状態で出やすい「具体的な変化サイン」
軽躁状態(生活には支障がない程度の高揚)と躁状態(社会生活に大きな影響が出る高揚)では、以下のような行動や気分の変化が現れます。
| 変化の分類 | 主な症状と具体的な行動の例 |
|---|---|
| 睡眠・活動量の変化 | ・短い睡眠時間(2〜3時間など)でも疲れを感じず、朝早くから精力的に動き回る。 ・同時に複数の計画を立てたり、深夜まで連絡を取り続けたりする。 |
| 気分・言動の変化 | ・気分が異様に高揚し、根拠のない強い自信(万能感)を持つ。 ・話すスピードが非常に早くなり、相手の話を聞かずに一方的に喋り続ける。 ・注意されると些細なことで激しく怒り出したり、攻撃的になったりする(易怒性)。 |
| 判断力・行動の変化 | ・収入に見合わない高額な買い物やローン契約、リスクの高い投資をしてしまう。 ・初対面の人にも馴々しく話しかけたり、無謀な事業計画を進めようとする。 |
ご家族や周囲が気づいたときの対応と受診の目安
ご本人は「自分は健康だ」と思っていることが多いため、無理に病気扱いすると強く反発することがあります。周囲の方は以下のステップを意識してみてください。
- 否定や議論を避ける: 高揚している言動を正面から否定したり激しく議論すると、感情を逆撫でして激高させてしまうことがあります。
- 体調(睡眠や疲れ)を理由に受診を促す: 「病気だから精神科へ行こう」ではなく、「最近あまり眠れていないみたいだから、体の疲れを診てもらいに行こう」と睡眠や体調面を気づかう形で受診を提案します。
- 受診の前にご家族がメモを用意する: 「睡眠時間」「急な出費」「言動の変化」などの具体的な事実を事前メモとしてご用意いただくと、診察が非常にスムーズです。
当院での躁・軽躁状態への診療アプローチ
当院では、患者様ご本人のお気持ちや体調の変化に丁寧に寄り添うとともに、ご家族のご相談や不安にも真摯に向き合う診療を心がけています。
- 身体疾患を見逃さない多角的な鑑別: 丁寧な問診に加え、必要に応じて血液検査(甲状腺機能亢進症などの身体疾患の除外、貧血・栄養状態等)や心理検査を行い、気分の高揚の背景にある原因を多角的に鑑別します。
- 体と心に優しい適切な治療提案: 気分の過度な高揚を穏やかに抑える気分安定薬の適切な調整や、自律神経を整える漢方薬、睡眠リズムを安定させるアプローチを組み合わせ、その後に来やすい激しい鬱(うつ)状態への転換を未然に防ぎます。
- 主治医としての休職・復職・環境調整サポート: 症状によって社会的なトラブルや業務への支障が出ている場合は、即日の休職診断書発行や傷病手当金の手続きを行い、復職時にも会社・産業医へ向けた具体的で実用的な環境調整意見書(過重労働防止や慎重なペース配慮等の記載)を発行いたします。
「調子が良いだけかもしれない」「本人が受診を嫌がる」という場合も、どうぞ一人で悩まず気軽にご相談ください。心身の波を平穏に整え、大切な日常を守るお手伝いをいたします。