こんなお悩みはありませんか?
- 子どもが突然まばたきを繰り返すようになった
- 「わざとやっているの?」と疑ってしまい、叱るべきか迷っている
- 咳払いや鼻をすする動作が続いていて、風邪や鼻炎と区別がつかない
- ストレスや緊張が強い場面で症状が悪化するように感じる
- 学校の先生や周囲の人にどう説明すればよいかわからない
- 一時的なものなのか、専門的な治療が必要なものなのか判断できない
- 本人が症状を気にして自己肯定感が下がっていないか心配
- どの診療科を受診すればよいのかわからない
- インターネットで調べるほど情報が多すぎて、何を信じればよいかわからない
- きょうだいや他の子どもと比べて、育て方が悪かったのではと悩んでいる
- 症状が一時的に消えたと思ったら、別の症状に置き換わって驚いている
- 大人になってからチックのような症状が出てきて不安を感じている
チック症群とは?
子供の頃目立っていても、思春期頃には軽快していることが多いのですが、続く方もおられます。大人になって、ストレスにさらされると、また症状が出るようになってしまうことがあります。ある大学院生は、順調に大学院の研究室に入ったのですが、皆自分の作業をするだけで、誰も教えてくれない、お互いに何も言わない日々を過ごしているうちに、以前のチック症状が出るようになったそうです。
チック症群とは?
チック症群(チックしょうぐん)とは、本人の意思とは関係なく、突発的・急速・反復的に生じる運動や発声のことを指す「チック」を主症状とする一群の疾患の総称です。
- 医学的には「チック障害」「チック症」とも呼ばれる
- 国際的な診断基準(DSM-5など)では、持続期間や症状の種類によっていくつかのサブタイプに分類される
- 小児期、特に4〜6歳頃に発症することが多いとされる
- 男児に多くみられる傾向が報告されている
- 症状の程度には個人差が大きく、軽度で自然に軽快するケースから、生活に支障をきたすケースまで幅がある
- 本人の「くせ」や「わざと」ではなく、脳の働きに関連する不随意な動きであると考えられている
- 「チック」という言葉自体は、フランス語で「痙攣性のひきつり」を意味する言葉に由来するとされる
チックは誰にでも一時的に起こりうる現象ですが、頻度や持続期間、症状の組み合わせによって「疾患」として扱われるかどうかが変わってきます。軽いチックは成長過程でよくみられるものであり、必ずしもすぐに治療が必要というわけではありません。
チック症群の頻度・有病率の目安
- 学齢期の子どもの一定割合が、一時的な運動チックまたは音声チックを経験するとされる
- 多くは軽度・一過性で、特別な治療をしなくても自然に軽快する
- トゥレット症候群のように慢性化するケースは、チック症群全体の中では比較的少数とされる
- 発症年齢のピークは4〜6歳頃、症状が最も強く出やすい時期は10歳前後とされることが多い
- 思春期以降に軽減・消失する例が多いとの報告がある一方、成人期まで症状が続く例も存在する
- 家族内に同様の症状を持つ人がいる場合、発症しやすい傾向が指摘されている
これらの数値はあくまで目安であり、個々の子どもの経過は年齢・環境・体質などによって大きく異なります。
チック症群の主な症状
チックは大きく「運動チック」と「音声チック(発声チック)」の2種類に分けられます。さらにそれぞれが「単純性」と「複雑性」に分類されます。
運動チック
- 単純運動チック
- まばたきを繰り返す
- 白目をむく
- 顔をしかめる
- 首を振る、傾ける
- 肩をすくめる
- 鼻をひくつかせる
- 口をゆがめる
- 腕や手を素早く動かす
- 複雑運動チック
- 物に触れる、叩く
- 飛び跳ねる
- 特定の動作を繰り返す(自分の体を触る、姿勢を変えるなど)
- 他人の動作を真似する(エコプラキシア)
- 物のにおいを嗅ぐ、物を並べ直す
- 卑猥とされる身振りをする(コプロプラキシアと呼ばれる場合がある)
音声チック(発声チック)
- 単純音声チック
- 咳払い
- 鼻をすする
- 「あっ」「うっ」などの短い発声
- 舌打ち
- 喉を鳴らす音
- 複雑音声チック
- 意味のある単語やフレーズを繰り返す
- 状況にそぐわない言葉を発する(汚言症・コプロラリアと呼ばれる場合がある)
- 他人の言葉を繰り返す(エコラリア)
- 自分の言葉を繰り返す(パリラリア)
症状の特徴
- 症状は「波」があり、強くなったり弱くなったりを繰り返すことが多い
- ストレス、緊張、疲労、興奮した場面で悪化しやすい
- リラックスしている時や集中している時に軽減する場合がある
- 一時的に意識して抑えることができる場合もあるが、我慢し続けると強い不快感(前駆衝動)が生じやすい
- 症状が別の部位や種類に移り変わることがある(部位移動)
- 一日の中でも症状の出方に波があり、朝は少なく夕方以降に増える例が報告されている
- 学校など緊張する場面では抑えられていても、帰宅後にまとめて症状が出ることがある(リバウンド現象)
- 睡眠中は症状が軽減または消失することが多いとされる
チック症群の原因
チック症群の原因は完全には解明されていませんが、いくつかの要因が関与していると考えられています。
神経生物学的要因
- 脳内の神経伝達物質(ドーパミンなど)のバランスの乱れが関与している可能性が指摘されている
- 大脳基底核と呼ばれる脳の部位の機能異常が関連するという報告がある
- 運動の調整に関わる神経回路(皮質-線条体-視床-皮質回路)の働きが関係しているとする研究がある
遺伝的要因
- 家族内での発症が報告されており、遺伝的な素因が関与する可能性がある
- ただし単一の遺伝子で決まるものではなく、複数の遺伝子や環境要因が組み合わさると考えられている
- 血縁者にチック症群やトゥレット症候群がある場合、発症リスクがやや高まるとの報告がある
環境要因・心理社会的要因
- ストレスや強い緊張が症状の増悪に関連することがある
- 睡眠不足や疲労が影響する場合がある
- 感染症の罹患やその他の身体的要因が、一部のケースで症状の変化と関連するとの議論もあるが、詳細は研究段階である
- 直接の原因ではないが、症状の出方に影響を与える要因として知られている
併存しやすいとされる特性
- 注意欠如・多動症(ADHD)
- 強迫症(OCD)
- 発達特性との関連が指摘されることがある
- 不安症状や学習面の困難を伴うケースも報告されている
これらはあくまで関連が指摘されている要因であり、「これが原因で必ず発症する」というものではない点に注意が必要です。また、保護者の育て方や本人の性格が直接の原因になるという医学的根拠はないとされています。
チック症群の種類(分類)
チック症群は、症状の持続期間や種類によって主に以下のように分類されます。
暫定的チック症(一過性チック障害)
- 運動チックまたは音声チックのいずれか、あるいは両方がみられる
- 発症から1年未満で症状が消失するもの
- 小児期に比較的よくみられる
- 多くの場合、特別な治療をしなくても自然に経過をみて軽快する
持続性(慢性)運動または音声チック症
- 運動チックまたは音声チックのどちらか一方が1年以上持続するもの
- 両方が同時に持続する場合は該当しない
- 症状の種類や強さは経過の中で変化することがある
トゥレット症候群(トゥレット症)
- 複数の運動チックと1つ以上の音声チックが、同時にではなくても1年以上にわたって存在するもの
- 発症は18歳未満であることが診断の目安とされる
- チック症群の中でも症状が多様で、生活への影響が大きくなりやすいタイプとされる
- ADHDや強迫症などを併存する割合が比較的高いとされる
- 症状の重症度には個人差が大きく、軽度で周囲に気づかれにくい人から、日常生活に大きな支障が出る人までさまざまである
その他の特定・非特定のチック症
- 上記の基準に完全には当てはまらないが、チックに類する症状がみられる場合に用いられる分類
- 発症年齢が18歳以降である場合や、症状の持続期間が基準に満たない場合などが含まれる
チック症群の診断
チック症群の診断は、主に問診と経過観察によって行われます。特定の血液検査や画像検査だけで診断が確定するものではありません。
問診で確認される主な項目
- 症状が始まった時期
- 症状の種類(運動・音声)とその変化
- 症状の持続期間
- 症状が出やすい状況(緊張時、リラックス時など)
- 日常生活・学校生活への影響の程度
- 家族歴の有無
- 併存する可能性のある症状(多動、こだわりの強さ、不安など)
- 過去の感染症や身体疾患の有無
鑑別が必要な疾患
- てんかん(ミオクロニー発作など)
- ジストニアなどの他の運動障害
- アレルギー性結膜炎・鼻炎(まばたきや鼻すすりとの区別)
- 心因性の症状(機能性神経学的症状)
- 常同運動症(発達特性に伴う反復的な動き)
検査について
- チック症群自体を確定する特異的な検査は基本的に存在しない
- 他の疾患を除外する目的で、必要に応じて脳波検査や血液検査、画像検査などが行われる場合がある
- 検査の必要性は、症状の経過や随伴症状の有無によって医師が個別に判断する
診断は小児科、小児神経科、児童精神科、精神科などで行われることが一般的です。初診時にはこれまでの症状の経過をメモや動画で記録しておくと、診察がスムーズに進みやすいといわれています。
チック症群の治療法
治療方針は、症状の程度や本人・家族の困り感の強さに応じて検討されます。軽度であれば経過観察のみで自然軽快することも少なくありません。
心理教育・環境調整
- 本人・家族・学校関係者に対して、チックが「わざと」ではなく不随意な症状であることを伝える
- 症状を過度に指摘したり叱責したりしないようにする
- ストレスの少ない環境づくりを心がける
- 十分な睡眠と規則正しい生活リズムを整える
- 家族全体がチックについて正しい知識を持つことで、本人の安心感につながるとされる
行動療法的アプローチ
- ハビットリバーサルトレーニング(習慣逆転法)
- 前駆衝動に気づき、チックとは両立しない拮抗動作を行う練習を行う手法
- 包括的行動的介入(CBIT)
- 心理教育、症状のモニタリング、拮抗反応訓練などを組み合わせたプログラム
- 海外では一定の有効性が報告されており、国内でも導入が進みつつある
薬物療法
- 症状が生活に大きな支障をきたす場合に検討される
- ドーパミン系に作用する薬剤などが使用されることがある
- 併存するADHDや強迫症状に対する薬物療法が並行して行われる場合もある
- 薬物療法の必要性や種類、量は、症状の程度や本人の状態に応じて医師が個別に判断する
- 効果や副作用には個人差があるため、定期的な診察のもとで調整していくことが一般的である
併存症へのアプローチ
- ADHDや強迫症などを併存している場合、そちらの治療が優先されることもある
- 心理士やカウンセラーによるサポートが併用されることもある
- 不安症状が強い場合は、リラクゼーション法などのストレスマネジメントが取り入れられることもある
トゥレット症候群についてもう少し詳しく
- トゥレット症候群は、チック症群の中でも特に症状の幅が広く、周囲の理解が重要とされる疾患である
- 汚言症(不適切な言葉が出てしまう症状)はメディアなどで注目されやすいが、実際に経験する人は一部にとどまるとされる
- 症状の多くは思春期以降に軽減する傾向があるとされるが、成人期まで症状が続く人もいる
- 学業や対人関係への影響が大きい場合は、学校と連携した配慮が重要になる
- 診断や治療は、専門的な知識を持つ医療機関で継続的にフォローされることが望ましいとされる
受診の目安
以下のような場合は、一度専門機関に相談することが勧められます。
- 症状が数週間〜数ヶ月にわたって続いている
- 症状の種類や部位が増えてきている
- 本人が症状を強く気にしている、自己肯定感の低下がみられる
- 学校や友人関係で困りごとが生じている
- 睡眠や日常動作に支障が出ている
- 家族だけで対応することに不安を感じている
- チック以外の気になる症状(多動、こだわり、不安など)を伴っている
- 症状が本人の体に負担(痛みや疲労)を与えている
受診先としては、小児科、小児神経科、児童精神科、心療内科などが選択肢となります。まずはかかりつけの小児科に相談し、必要に応じて専門機関を紹介してもらう方法もあります。
家庭・学校でのサポートのポイント
家庭でできること
- 症状を指摘しすぎず、自然に見守る姿勢を持つ
- 本人のペースを尊重し、無理に我慢させない
- ストレスの原因になっていることがないか、生活全体を振り返る
- 症状について本人と話す際は、責めるのではなく安心させる言葉を選ぶ
- 睡眠時間や生活リズムを整え、心身の負担を減らす工夫をする
- きょうだいや周囲の子どもにも、チックについて簡単に説明しておく
学校でできる配慮の例
- 症状について教員や周囲の理解を得ておく
- 授業中に症状が出ても叱責しないよう共有しておく
- 必要に応じて座席や休憩のタイミングなど環境面の配慮を相談する
- いじめやからかいが起きないよう見守り体制を整える
- テストなど緊張しやすい場面での配慮について、事前に相談しておく
本人の心理的な側面へのケア
- チックを周囲に指摘されることで、本人が強い恥ずかしさや不安を感じる場合がある
- 症状を隠そうとする意識が、かえって本人の負担を増やすこともある
- 自己肯定感の低下につながらないよう、チック以外の得意なことや良いところに目を向ける関わりが大切とされる
- 本人が症状について話したいときに、安心して話せる雰囲気を家庭や学校で作ることが重要である
- 必要に応じてスクールカウンセラーや心理士など、専門的な相談先を活用することも選択肢の一つである
よくある質問(FAQ)
- Q. チックは本人の意思で止められますか?
- 一時的に抑えることができる場合もありますが、我慢し続けると強い不快感(前駆衝動)が生じ、その後より強く症状が出ることがあります。基本的には本人の意思でコントロールできるものではないと理解することが大切です。
- Q. しつけや育て方が原因なのでしょうか?
- しつけや育て方が直接の原因であるとは考えられていません。神経生物学的な要因が関与していると考えられており、保護者が過度に自分を責める必要はありません。
- Q. 症状は成長とともに軽くなりますか?
- 多くの場合、思春期以降に症状が軽減する傾向があるとされていますが、経過には個人差があります。症状の程度や持続期間によって見通しは異なるため、経過は医師と相談しながら確認していくことが望ましいです。
- Q. チックと似た症状にはどのようなものがありますか?
- アレルギー性結膜炎による瞬きの増加や、鼻炎による鼻すすりなど、チックと紛らわしい症状は複数存在します。気になる症状がある場合は自己判断せず、医療機関で相談することが勧められます。
- Q. 学校に症状をどう伝えればよいですか?
- 症状の内容、対応してほしいこと(叱責しない、無理に注意しないなど)を具体的に伝えることが有効です。必要であれば、医療機関から学校向けの説明資料や診断書の発行を相談することもできます。
- Q. 治療をすれば必ず症状はなくなりますか?
- 治療によって症状の頻度や強さが和らぐことは期待できますが、必ずしも完全に消失するとは限りません。症状の経過や治療効果には個人差があるため、担当医と相談しながら方針を検討することが大切です。
- Q. 大人になってから急にチックのような症状が出た場合も同じ病気ですか?
- 成人期に新しく現れる運動・発声症状は、小児期発症のチック症群とは異なる原因(他の疾患や薬剤の影響など)が関与している場合もあります。自己判断せず、医療機関で評価を受けることが勧められます。
- Q. 兄弟姉妹がいる場合、下の子にも症状が出やすいですか?
- 家族内での発症が報告されているため、遺伝的な要因が一定程度関与する可能性はありますが、必ず発症するというものではありません。気になる場合は経過を見ながら、必要に応じて相談してください。
- Q. 幼稚園や保育園の先生にも伝えるべきですか?
- 集団生活の中で症状が見られる場合は、担任の先生に症状の特徴と、叱責せず見守ってほしい旨を伝えておくと、本人が安心して過ごしやすくなるとされています。
- Q. 症状が悪化しているように感じたらすぐに薬物療法が必要ですか?
- 症状の悪化がみられても、まずは環境調整や経過観察が検討されることが多く、薬物療法はあくまで選択肢の一つです。生活への支障の程度を踏まえ、医師と相談しながら方針を決めることが大切です。
- Q. 一度落ち着いた症状がぶり返すことはありますか?
- ストレスや疲労、環境の変化などをきっかけに、一度軽快した症状が再び現れることはあり得るとされています。再燃した場合も、慌てずにこれまでと同様に環境調整や専門機関への相談を検討することが勧められます。
- Q. チックのある子どもに習い事やスポーツをさせても大丈夫ですか?
- 症状の程度にもよりますが、多くの場合、習い事やスポーツ自体を制限する必要はないとされています。本人が楽しんで取り組める活動は、自己肯定感やストレス発散の面でも良い影響が期待できます。気になる場合は担当医に相談しながら判断するとよいでしょう。
DSM-5におけるチック症群の診断基準の考え方
医学的な診断基準(DSM-5など)では、チック症群は主に以下の観点から分類・診断されるとされています。あくまで一般的な考え方であり、実際の診断は医師が個別に行います。
- 症状の種類:運動チックか音声チックか、あるいは両方か
- 持続期間:1年未満か、1年以上続いているか
- 発症年齢:おおむね18歳未満での発症であるか
- 他の疾患による説明の可否:薬剤の影響や他の身体疾患、他の精神疾患で症状がよりよく説明されないこと
- 生活への影響の程度:症状によって本人が著しい苦痛を感じているか、学業・対人関係などに支障が出ているか
これらの基準はあくまで診断のための枠組みであり、基準に完全に当てはまらない場合でも、症状によって本人が困っている場合には相談・支援の対象になり得ます。
併存しやすいとされる疾患・特性についてもう少し詳しく
チック症群、特にトゥレット症候群では、以下のような特性や疾患を併存することが比較的多いと報告されています。それぞれの特性がチックの症状そのものよりも、日常生活の困りごとの中心になっている場合もあります。
注意欠如・多動症(ADHD)
- 落ち着きのなさ、集中の持続の難しさ、衝動的な行動などがみられる場合がある
- チックの症状よりも、ADHD由来の困りごと(忘れ物、学習面のつまずきなど)が生活上の課題として大きいケースもある
- 治療の優先順位は、本人の困り感が強い症状から検討されることが多い
強迫症(OCD)・強迫的な傾向
- 特定の順番や回数にこだわる、確認行為を繰り返すなどの症状がみられることがある
- チックと強迫行為は見分けが難しい場合があり、専門医による評価が有用とされる
不安症状
- 緊張しやすい場面でチックが悪化することと関連して、全般的な不安の強さがみられる場合がある
- 学校行事やテストなど特定の場面で症状が強まりやすい傾向がみられることがある
学習面の困難
- 読み書きや計算などの特定の学習領域に困難がみられる場合がある
- チックそのものよりも、学習面のサポートが優先的に必要になることもある
睡眠の問題
- 入眠困難や夜間の落ち着きのなさなど、睡眠に関する困りごとを伴う場合がある
- 睡眠不足は日中のチック症状を悪化させる要因の一つとされるため、生活リズムの調整が重要視される
ハビットリバーサルトレーニング(習慣逆転法)の進め方の一例
行動療法的アプローチの代表例として知られるハビットリバーサルトレーニングは、一般的に以下のような段階を踏んで進められるとされています。あくまで一般的な流れであり、実施にあたっては専門家の指導のもとで行うことが推奨されます。
- 気づきのトレーニング:チックが起こる直前の感覚(前駆衝動)やきっかけになる状況に気づく練習を行う
- 拮抗動作の習得:チックの動きとは両立しない、目立ちにくい別の動作(拮抗反応)を身につける
- 実践練習:前駆衝動に気づいた際に、日常生活の中で拮抗動作を実際に行う練習を重ねる
- 般化練習:練習した場面だけでなく、さまざまな状況でも同じように対応できるようにする
- 維持とフォローアップ:習得したスキルを維持できているか、定期的に振り返る
この手法は本人の理解と協力が前提となるため、年齢や発達段階に応じて導入のタイミングを検討することが大切です。
チックと間違えられやすい「くせ」との違い
- 単なる「くせ」は多くの場合、本人が意識的に行っている行動であり、注意すれば比較的容易にやめられる
- チックは不随意な症状であり、一時的に抑えることはできても、完全に自分の意思だけでコントロールすることは難しいとされる
- チックには「前駆衝動」と呼ばれる、動作の直前に生じるムズムズ感や違和感を伴うことが多い
- 症状が特定の部位に固定されず、時期によって別の部位や種類に移り変わる点も、単なるくせとの違いとして挙げられることがある
- 判断に迷う場合は自己判断せず、医療機関に相談することが望ましい
保護者が知っておきたい声かけの工夫
- 「またやってるよ」「やめなさい」といった指摘は、本人のストレスを増やし、症状を悪化させる可能性があるため避けることが望ましいとされる
- 症状が出ていないときに、チックとは関係のない話題で普段通りに接する時間を大切にする
- 本人が症状について話したいそぶりを見せたときは、否定せずに気持ちを受け止める
- きょうだいや友人がからかうような言動をした場合は、その場でやさしく制止し、理由を説明する
- 「治す」ことだけを目標にするのではなく、本人が安心して過ごせる環境づくりを優先する視点も大切にされている
チック症群と発達特性との関わりについて
チック症群は、自閉スペクトラム症(ASD)などの発達特性と併存する場合があることが報告されています。両者は異なる特徴を持ちますが、症状が似て見える部分があるため、混同されやすい点にも注意が必要です。
- 自閉スペクトラム症でみられる「常同行動」は、本人が心地よさを感じて繰り返す傾向がある一方、チックは前駆衝動という不快感を伴うことが多いとされる
- 発達特性とチック症群を併せ持つ場合、それぞれの特性に応じた支援を組み合わせて検討することが望ましいとされる
- どちらの特性が生活上の困りごとの中心になっているかは人によって異なるため、専門機関での丁寧な評価が重要とされる
- 学校や家庭での関わり方も、併存する特性を踏まえて個別に調整されることが望ましい
相談先・支援機関の選び方
チック症群について相談できる窓口はいくつかあり、症状の程度や年齢に応じて選択肢が異なります。
- かかりつけの小児科:日常的な健康相談の延長として、まず気軽に相談できる窓口
- 小児神経科・児童精神科:チックの診断や治療に専門的な知見を持つ医療機関
- 精神科・心療内科:思春期以降や成人での症状について相談できる窓口
- スクールカウンセラー:学校生活での困りごとについて相談できる存在
- 地域の発達相談窓口・保健センター:受診前の相談や、医療機関の紹介を受けられる場合がある
初めて相談する際は、症状が始まった時期や頻度、悪化・軽快する状況などをメモや動画で記録しておくと、より具体的な相談がしやすくなります。また、一つの窓口で解決しない場合でも、複数の相談先を組み合わせて利用することは珍しくありません。
チック症群に関する誤解と正しい理解
- 誤解:チックはわがままや甘えから起こる → 神経生物学的な要因が関与するとされており、本人の性格や甘えが原因ではないとされている
- 誤解:厳しく注意すればやめさせられる → 叱責や過度な指摘はストレスを増やし、かえって症状を悪化させる可能性があるとされる
- 誤解:チックがある子は知的発達に問題がある → チック症群そのものは知的発達の遅れを意味するものではないとされている
- 誤解:一度発症したら一生治らない → 多くのケースで思春期以降に症状が軽減する傾向があるとされている
- 誤解:薬を飲めばすぐに完治する → 薬物療法は症状の緩和を目的とした選択肢の一つであり、必ずしも完治を保証するものではない
正しい知識を持つことは、本人だけでなく周囲の大人が適切に関わるための土台になります。
経過観察中に記録しておくとよいポイント
- 症状が出やすい時間帯や場面(学校、家庭、特定の授業など)
- 症状の種類と強さの変化
- 症状が悪化・軽快したと感じたきっかけ(睡眠不足、行事前など)
- 本人が症状についてどのように感じているか(気にしている、気にしていないなど)
- これまでに相談した医療機関や、そこで受けたアドバイスの内容
こうした記録は、医療機関を受診する際に症状の経過を正確に伝える助けになり、診断や治療方針の検討にも役立つとされています。
まとめ
- チック症群は、本人の意思とは関係なく生じる運動・音声の反復的な症状を特徴とする疾患群である
- 症状の持続期間や種類によって、一過性のものから慢性的なもの、トゥレット症候群まで分類される
- 原因は完全には解明されていないが、神経生物学的要因や遺伝的要因の関与が指摘されている
- しつけや育て方が直接の原因ではないとされている
- 治療は心理教育や環境調整から行動療法、必要に応じた薬物療法まで、症状の程度に応じて選択される
- 症状が生活に支障をきたす場合や、本人・家族の困り感が強い場合は、専門機関への相談が勧められる
- 家庭や学校での理解と適切な関わりが、本人の安心につながる
- 本人の心理的な負担にも目を向け、症状以外の側面も含めて支えていく姿勢が大切である
チック症群についての理解を深めることは、本人や家族が安心して日常生活を送るための第一歩となります。気になる症状がある場合は、一人で悩まずご相談ください。