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こんなお悩みはありませんか?

  • 突然、激しい息苦しさや動悸、めまいにおそわれ「死んでしまうのでは」と強い恐怖を感じる
  • 「またあの発作が起きたらどうしよう」という不安が消えない
  • 電車やバス、エレベーターなど「すぐに逃げ出せない場所」に行くのが怖い
  • 美容院や歯科医院、人混みなど「途中で退出できない状況」を避けてしまう
  • 内科で心臓や脳の検査を受けても「異常なし」と言われ、原因が分からず困っている

パニック障害(パニック症)とは?

現代のパニック発作

情報過多、デジタルストレス、不規則な生活習慣など、デジタル社会特有の要因と密接に結びついている点が大きな特徴です。本来、パニック発作は「突然理由もなく、激しい動悸や息苦しさ、めまいなどが襲う自律神経の誤作動」ですが、現代特有の背景によってその引き金や深刻さが増しています。

このようなお悩みを抱えている場合、パニック障害(パニック症)の可能性があります。以下で、症状のメカニズムや原因、治療法について詳しく解説します。

パニック障害(パニック症)とは?

パニック障害は、何の前触れもなく突然、激しい動悸や息苦しさ、めまいなどの「パニック発作」が起こり、それによって「死ぬかもしれない」「気が狂うかもしれない」といった強い恐怖に襲われる病気です。

内科などで心臓や呼吸器の検査を受けても異常が見つからないことが多く、「心臓の病気かと思った」と救急搬送されたことをきっかけに発症に気づく方も少なくありません。実際、救急外来を受診した動悸・胸痛の患者様のうち、一定数はパニック発作が原因であったという報告もあります。それほど、パニック発作は身体的な緊急事態と見分けがつきにくいほど激しい症状を伴うのです。

原因は本人の「気の持ちよう」や「気の弱さ」ではなく、脳内の偏桃体や神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリンなど)のバランスが一時的に乱れ、脳の「危険アラーム」が誤作動してしまうことによって生じます。

発作自体で命を落とすことはありませんが、放置すると「また発作が起きるのでは」という不安(予期不安)から行動範囲が狭まり、日常や仕事に大きな支障をきたしてしまいます。お薬による治療や少しずつ苦手な場面に慣れていくアプローチ(精神療法)を組み合わせることで、十分に回復を目指せる病気です。

突然の激しい体調変化や、それに伴う強い不安感で以下のようなお悩みを抱えていませんか?

【突然起こる激しい身体症状(パニック発作)】

  • 突然、激しい動悸や心臓のバクバク、胸の苦しみ・圧迫感に襲われる
  • 息が吸えない・息苦しい感じ(過換気)がして、「死んでしまうのではないか」と強い恐怖を感じる
  • 突然の手足の震え、めまい、立ちくらみ、冷や汗、強い吐き気が起きる
  • 自分や周囲の現実感がなくなり、気が狂ってしまうのではないかと恐ろしくなる

【発作に対する不安や行動の制限(予期不安・広場恐怖)】

  • 「またあの発作が起きるかもしれない」と考えると、不安でたまらなくなる(予期不安)
  • 電車やバス、飛行機、高速道路など、発作が起きたときに逃げられない場所に行くのが怖い
  • 美容院や映画館、人混み、レジの行列など、すぐに脱出できない環境を避けてしまう(広場恐怖)
  • 不安で一人で外出することができず、家族の付き添いがないと行動できない

これらの症状に心当たりがある場合、一人で抱え込まず、専門的な治療を受けることが回復への第一歩です。次の章から、パニック障害がなぜ起こるのか、どのように進行していくのかを順を追って解説していきます。

セルフチェック:あなたの症状はパニック障害の可能性がありますか?

以下の項目に多く当てはまる場合、パニック障害の可能性を考慮し、専門医への相談をおすすめします。あくまで目安であり、正確な診断には医療機関での問診が必要です。

  • 突然、理由もなく激しい動悸や息苦しさに襲われたことがある
  • その発作は10分以内にピークに達し、多くは30分程度でおさまる
  • 発作の最中、「死んでしまうのでは」「気が狂ってしまうのでは」という強い恐怖を感じた
  • 内科などで検査を受けても、心臓や脳に異常は見つからなかった
  • 「また発作が起きるかもしれない」という不安が、発作のないときにも続いている
  • 発作が起きそうな場所や状況(電車、エレベーター、人混みなど)を避けるようになった
  • 一人での外出に不安を感じ、誰かの付き添いを求めるようになった
  • こうした症状のために、仕事や学業、対人関係に支障が出ている

3つ以上当てはまる場合は、一度精神科・心療内科に相談されることをおすすめします。特に「発作を避けるための行動の変化」がある場合は、症状が進行している可能性があるため、早めの受診が望ましいでしょう。

パニック障害はどのくらいの人がなる病気か

パニック障害は決して珍しい病気ではありません。生涯のうちに一度でもパニック発作を経験する人は一定数存在し、そのうち発作を繰り返し「パニック障害」と診断される方も少なくないとされています。発症年齢は20代から30代が多いとされていますが、思春期から中高年まで幅広い年代で発症する可能性があります。また、女性の方が男性よりも発症しやすい傾向があるとも言われています。

「自分だけがこんな辛い思いをしている」と感じてしまう方も多いのですが、実際には多くの方が同じような症状に悩み、治療によって回復しています。特別なことではなく、適切な対応が可能な病気であるという点をまず知っていただきたいと思います。

パニック障害の原因

パニック障害の発症には、単一の原因ではなく、複数の要因が複雑に関わっていると考えられています。

脳機能の偏り

パニック障害では、恐怖や不安を司る脳の「偏桃体」が過敏になっている状態と考えられています。本来であれば危険がない状況でも、脳が「危険信号」を誤って発してしまうことで、身体が実際の危機に対するのと同じ反応(動悸・過呼吸・発汗など)を起こしてしまいます。これは、火災報知器が実際には火事が起きていないのに誤作動して鳴り響いてしまうようなものだとイメージすると分かりやすいかもしれません。脳の警報システムが過敏になり、些細な身体の変化(少し息が上がった、少し心拍数が上がったなど)を「命の危険」と誤認識してしまうのです。

神経伝達物質のバランスの乱れ

セロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質のバランスが一時的に崩れることも、発作の引き金になると考えられています。これらの物質は気分や自律神経の働きを調整する役割を持っており、そのバランスが乱れることで不安や恐怖の感じ方が強くなります。治療で用いられるSSRIという薬剤は、このセロトニンのバランスを整えることを目的としています。

ストレスや生活環境の変化

過労、睡眠不足、大きな環境の変化(転職・引っ越し・人間関係のトラブル・結婚や出産といったライフイベントなど)、身体的な疲労の蓄積といった要因が、発症のきっかけになることがあります。真面目で責任感の強い方、几帳面な性格の方、周囲に気を遣いすぎる傾向のある方に発症しやすいともいわれていますが、性格だけが原因ではなく、複数の要因が重なって発症すると考えられています。

遺伝的な要因

パニック障害は、家族内での発症率がやや高いことが分かっており、体質的・遺伝的な要因も関与していると考えられています。ただし、遺伝的な要因があるからといって必ず発症するわけではなく、生活環境やストレスなど後天的な要因との組み合わせで発症すると考えられています。

カフェインやアルコールの影響

カフェインの過剰摂取やアルコールの離脱症状が、パニック発作の引き金になることも知られています。カフェインには交感神経を刺激する作用があり、動悸や手の震えといった身体症状を引き起こしやすくなります。日常的に多量のカフェインを摂取している方や、飲酒の習慣がある方は注意が必要です。

いずれにしても、パニック障害は本人の「気の持ちよう」で起きるものではなく、脳や自律神経の機能的な変化によって生じる病気です。ご自身を責める必要はありません。

パニック障害の主な症状

パニック障害の症状は、大きく分けて「パニック発作」「予期不安」「広場恐怖」の3つの段階で進行していくことが多いとされています。それぞれの段階について、詳しく見ていきましょう。

1. パニック発作

前触れなく突然に始まる、激しい身体症状です。代表的な症状には以下のようなものがあります。

  • 動悸、心拍数の急上昇
  • 息苦しさ、呼吸困難感(過換気)
  • 胸の痛みや圧迫感
  • めまい、ふらつき、立ちくらみ
  • 発汗、冷や汗
  • 手足の震え
  • 吐き気、腹部の不快感
  • 寒気やほてり
  • 現実感の消失(自分が自分でないような感覚、周囲が現実でないような感覚)
  • 「このまま死んでしまうのではないか」という強い恐怖感
  • 「気が狂ってしまうのではないか」という恐怖感

これらの症状は通常、数分でピークに達し、20~30分程度で自然に治まることがほとんどです。長くても1時間以内に落ち着くことが一般的です。しかし発作の最中は非常に強い苦痛を伴うため、「今すぐ死んでしまうのではないか」という切迫した恐怖を感じ、救急外来を受診される方も少なくありません。実際に検査をしても心臓や脳に異常が見つからないことがほとんどで、これがかえって「原因不明の恐ろしい発作」として患者様を不安にさせてしまう一因にもなっています。

2. 予期不安

一度パニック発作を経験すると、「またあの発作が起きるのではないか」という強い不安が続くようになります。これを「予期不安」と呼びます。予期不安が強くなると、発作が起きていないときでも常に緊張状態が続き、日常生活に大きなストレスを感じるようになります。

例えば、「電車に乗っているときにまた発作が起きたらどうしよう」「会議中に発作が起きたら恥ずかしい」といった考えが頭から離れなくなり、常に身体の些細な変化(少し心拍数が上がった、少し息苦しい気がするなど)に過敏になってしまいます。この過敏さがさらに不安を強め、実際にパニック発作を誘発してしまうという悪循環に陥ることもあります。

3. 広場恐怖(広場恐怖症)

予期不安が進むと、「発作が起きたときにすぐに逃げられない場所」や「助けを求められない状況」を避けるようになります。これを「広場恐怖」と呼びます。

具体的には、電車やバス、飛行機、エレベーター、高速道路の運転、美容院、映画館、人混み、レジの行列、歯科医院の診察台の上、橋の上などが該当します。これらの場所や状況に共通しているのは、「発作が起きたときにすぐにその場を離れられない」「助けを呼びにくい」という点です。

症状が進行すると、一人での外出が困難になり、家族の付き添いがないと行動できなくなるケースもあります。仕事や通学、買い物といった日常生活のあらゆる場面に支障が出てしまい、社会生活からの孤立につながることもあるため、早めの対応が重要です。

パニック発作が起きやすい場面

パニック発作は「いつでも、どこでも」起こり得るものですが、特に以下のような場面で誘発されやすいと言われています。

  • 満員電車やバスの中:身動きが取れず、すぐに降りられない状況が不安を強めます。
  • エレベーターや地下鉄:密閉された空間で、閉じ込められる感覚が引き金になりやすい場面です。
  • 人混みや行列:レジの行列、混雑した店内など、すぐにその場を離れにくい状況です。
  • 美容院や歯科医院:施術中で自由に動けない、途中で退出しづらいという心理的な圧迫感が発作につながることがあります。
  • 会議やプレゼンテーションの最中:人前で発作が起きることへの恐怖(「醜態をさらしてしまうのではないか」という不安)が引き金になることもあります。
  • 高速道路の運転中:すぐに車を停められない、次の出口まで距離があるといった状況が不安を強めます。
  • 就寝中:睡眠中に突然目が覚めてパニック発作が起こる「夜間パニック発作」も存在し、これを経験すると就寝そのものへの恐怖が生まれることもあります。

こうした場面を一つひとつ避けるようになると、行動範囲がどんどん狭まっていきます。「発作が起きそうな場所を避ける」ことは一時的には安心につながりますが、長期的には回避できる場所がさらに広がり、生活の質を大きく損なってしまう悪循環に陥りやすい点に注意が必要です。

ご家族や周囲の方へ

パニック障害は、本人にしか分からない強い苦しみを伴う病気です。ご家族や周囲の方が病気について正しく理解し、適切にサポートすることも、回復を後押しする大きな力になります。

  • 発作が起きたときは、「大丈夫、すぐに治まるから」と落ち着いた声で寄り添い、無理に励ましたり急かしたりしないことが大切です。
  • 「気の持ちようだ」「甘えているだけ」といった声かけは、本人をさらに追い詰めてしまう可能性があるため避けましょう。
  • 通院や服薬を継続できるよう、日常生活の中でさりげなくサポートすることも助けになります。
  • 回避行動(外出を避ける、特定の場所に行けないなど)を無理に正そうとせず、本人のペースを尊重することが重要です。

家族だけで抱え込まず、必要に応じて医療機関に一緒に相談することも検討してみてください。

パニック障害の経過(治療しない場合と治療する場合の違い)

パニック障害は、適切な治療を受けるかどうかによって、その後の経過が大きく異なります。

治療を受けない場合

初回のパニック発作後、多くの方は「また起きるかもしれない」という予期不安を抱くようになります。治療を受けずに放置すると、発作を避けるための回避行動が徐々に広がり、電車に乗れない、一人で外出できないといった広場恐怖に発展することがあります。さらに、行動範囲の制限によるストレスや自己肯定感の低下から、うつ病を併発するケースも少なくありません。症状が慢性化すると、社会生活からの孤立が深まり、回復により長い時間がかかってしまう傾向があります。

治療を受ける場合

早期に薬物療法と精神療法を開始することで、多くの方が数か月単位で発作の頻度が減少し、日常生活を取り戻していきます。治療の過程で一時的に症状の波があることもありますが、医師と相談しながら段階的に取り組むことで、最終的には発作への不安に振り回されずに生活できるようになることを目指せます。

このように、同じパニック障害であっても、早期治療の有無によってその後の生活の質は大きく変わってきます。「そのうち治まるだろう」と様子を見すぎず、早めに専門医へ相談することが、結果的に回復への近道となります。

パニック障害と仕事・学業との両立

パニック障害の症状が強い時期は、通勤中の電車や会議中に発作が起きるのではという不安から、仕事や学業に大きな支障が出ることがあります。「発作が起きたらどうしよう」という予期不安が強いと、遅刻や欠勤、休学につながってしまうケースも少なくありません。

治療によって症状が安定してくれば、多くの方が徐々に仕事や学業に復帰し、以前と変わらない生活を取り戻しています。症状が強い時期には、無理をして通常通りの生活を維持しようとせず、必要に応じて休職や業務内容の調整について、医師や職場・学校と相談することも一つの選択肢です。治療を優先し、段階的に日常生活のペースを取り戻していくことが、結果的に早期の回復につながります。

パニック障害と間違えられやすい病気

パニック発作の最中は、心臓がバクバクと激しく脈打ち、呼吸が苦しくなり、手足がしびれるといった、まるで命に関わる緊急事態のような身体症状が現れます。そのため、多くの方が「心臓病では」「脳の病気では」と考え、まず内科や救急外来を受診されます。パニック障害の症状は、他の身体的な病気の症状と非常によく似ているため、鑑別が重要になります。以下のような病気は、パニック障害と症状が重なることがあり、まず除外する必要があります。

  • 不整脈や狭心症などの心疾患
  • 甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)
  • 低血糖
  • 過換気症候群
  • 自律神経失調症
  • てんかん

そのため、初めてパニック発作のような症状を経験した場合は、まず内科を受診し、心電図や血液検査などで身体的な異常がないかを確認することが推奨されます。その上で身体的な異常が見つからない場合、精神科・心療内科での診療が検討されます。

また、パニック障害は、社交不安障害(対人恐怖)やうつ病、全般性不安障害などを合併しやすいことも知られています。長期間放置すると、外出できないストレスや将来への不安から、気分の落ち込みが強くなり、うつ病を併発してしまうケースもあります。早期に適切な治療を受けることで、こうした二次的な問題を防ぐことにもつながります。

パニック障害の診断

パニック障害の診断にあたっては、まず身体的な病気(心疾患、甲状腺機能の異常、不整脈など)が隠れていないかを確認するため、内科的な検査が行われることがあります。身体的な異常が見つからない場合、精神科・心療内科での問診をもとに、国際的な診断基準(DSM-5など)に照らして診断が行われます。

診断の際には、以下のような点が確認されます。

  • 予期しないパニック発作を繰り返しているか
  • 発作後、1か月以上にわたって「また発作が起きるのでは」という不安が続いているか、あるいは発作に関連した行動の変化があるか
  • 発作を避けるための行動の変化(回避行動)が見られるか
  • 症状が他の病気や薬物・アルコールの影響で説明できないか
  • 症状によって仕事や対人関係など、社会生活に支障が出ているか

問診では、発作が起きた状況、頻度、具体的な症状の内容、発作が起きることへの不安の程度、避けている場所や状況などについて詳しくお伺いします。自己判断で「パニック障害だろう」と決めつけず、専門医による適切な診断を受けることが、その後の治療をスムーズに進めるためにも大切です。

パニック障害の治療法

パニック障害は、適切な治療によって十分に改善が見込める病気です。治療は主に「薬物療法」と「精神療法(心理療法)」を組み合わせて行われます。

薬物療法

薬物療法では、主に以下のような薬剤が用いられます。

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)

セロトニンのバランスを整えることで、不安や恐怖の感じ方を和らげる薬です。パニック障害治療の中心となる薬剤で、効果が出るまでに数週間かかることが一般的です。少量から開始し、身体への負担を見ながら少しずつ調整していくのが一般的な進め方です。

抗不安薬(ベンゾジアゼピン系など)

発作時の強い不安や身体症状を速やかに和らげる目的で使用されることがあります。即効性がある一方、長期使用による依存のリスクもあるため、医師の指示のもとで、あくまで症状が強い時期の補助的な使用として慎重に用いられます。

薬の効果や副作用には個人差があるため、自己判断で服薬を中止したり量を調整したりせず、医師と相談しながら治療を進めることが重要です。特にSSRIは急に中止すると離脱症状(めまい、しびれ、イライラ感など)が出ることがあるため、減薬・中止の際も医師の指導のもとで段階的に行う必要があります。服薬を始めた直後は、一時的に吐き気や眠気といった副作用が出ることもありますが、多くの場合は数日から数週間で身体が慣れていきます。気になる症状があれば、我慢せずに診察時に伝えるようにしましょう。

精神療法(認知行動療法など)

薬物療法と並行して、少しずつ苦手な場面に慣れていく「暴露療法」を含む認知行動療法が行われることがあります。パニック発作に対する誤った捉え方(「発作が起きたら死んでしまう」「発作が起きたら気が狂ってしまう」といった思考)を修正し、発作への恐怖そのものを和らげていくアプローチです。

具体的な進め方としては、まず発作のメカニズムを正しく理解すること(心理教育)から始まります。「発作は身体にとって危険なものではなく、脳の警報システムの誤作動である」と理解するだけでも、発作への恐怖が和らぐことがあります。次に、呼吸法やリラクゼーション法を身につけ、発作の兆候を感じたときに自分で落ち着きを取り戻す方法を練習します。

その後、段階的暴露療法として、不安の少ない状況から少しずつ苦手な場面にチャレンジしていきます。例えば「電車に一駅だけ乗ってみる」「エレベーターに家族と一緒に乗ってみる」といった小さな成功体験を積み重ね、徐々に一人で行動できる範囲を広げていきます。治療は段階的に進められ、無理に苦手な場面へ向き合わせることはありません。患者様のペースに合わせながら、回避してきた行動を少しずつ取り戻していくことを目指します。

生活習慣の見直し

治療と並行して、以下のような生活習慣の見直しも症状の改善に役立つとされています。

  • 十分な睡眠時間の確保
  • カフェインやアルコールの摂取量を控える
  • 規則正しい生活リズムを保つ
  • 過度なストレスを避け、適度な休息をとる
  • 軽い運動を習慣に取り入れる
  • 腹式呼吸などのリラクゼーション法を身につける

これらはあくまで治療の補助となるものであり、生活習慣の改善だけでパニック障害が治るわけではありません。医師による治療と組み合わせて取り組むことが大切です。

治療にはどのくらいの期間がかかるか

パニック障害の治療期間には個人差がありますが、一般的には薬物療法によって数週間から数か月で発作の頻度が減り、症状が落ち着いてくることが多いとされています。ただし、予期不安や広場恐怖が改善するまでにはさらに時間がかかることがあり、症状が安定した後も再発予防のために一定期間、薬の服用を継続することが推奨されます。

治療の途中で症状が良くなったからといって自己判断で通院や服薬を中断してしまうと、再発のリスクが高まることが知られています。目安として、発作がおさまり症状が安定した後も、半年から1年程度は薬の服用を継続し、その後医師と相談しながら少しずつ減薬していくという進め方が一般的です。焦らず段階的に治療を進めていくことが、長期的な回復につながります。

受診の目安

以下のような状態に当てはまる場合は、早めに精神科・心療内科への受診をご検討ください。

  • 突然の動悸や息苦しさを繰り返し経験している
  • 内科的な検査を受けても異常が見つからないのに、体調不良を繰り返している
  • 「また発作が起きるのでは」という不安から、外出や特定の行動を避けるようになった
  • 電車やエレベーターなど、特定の場所や状況を避けるようになった
  • 日常生活や仕事に支障が出ている
  • 気分の落ち込みや、外出できないことへの焦りを感じている

パニック障害は、放置すると回避行動が広がり、生活の質が大きく低下してしまう可能性があります。一方で、早期に適切な治療を受けることで、症状のコントロールがしやすくなり、回復までの期間も短くなる傾向があります。「気のせいかもしれない」「そのうち治まるだろう」と我慢せず、気になる症状があれば専門医にご相談ください。

よくあるご質問

Q. パニック発作が起きたとき、自分でできる対処法はありますか?
発作の最中は、ゆっくりとした腹式呼吸を意識し、「この発作は必ず数分でおさまる」「命に関わるものではない」と自分に言い聞かせることが助けになる場合があります。ただし、根本的な改善のためには、医療機関での治療が必要です。
Q. パニック障害は自然に治りますか?
軽度であれば自然に軽快することもありますが、多くの場合、適切な治療を受けないと予期不安や広場恐怖が悪化し、行動範囲がどんどん狭まっていく傾向があります。早期の受診をおすすめします。
Q. 薬を飲み続けることに抵抗があります。
お薬に対する不安を感じる方は少なくありません。効果や副作用、服薬期間の見通しについて、診察の際に医師へ遠慮なくご相談ください。患者様の状態やご希望に応じて、治療方針を一緒に考えていきます。
Q. パニック障害は再発しますか?
治療によって症状が落ち着いた後も、大きなストレスがかかったときなどに再発することがあります。再発した場合も、早期に治療を再開することで比較的スムーズに症状をコントロールできることが多いため、体調の変化を感じたら早めに医療機関へご相談ください。
Q. 子どもや高齢者でもパニック障害になりますか?
パニック障害は主に20代から30代での発症が多いとされていますが、思春期のお子様から高齢の方まで、幅広い年代で発症する可能性があります。年代によって症状の現れ方や生活への影響が異なるため、それぞれの年代に応じた配慮をしながら治療を進めていくことが大切です。
Q. 電車に乗れなくなってしまいました。治りますか?
広場恐怖によって電車やバスに乗れなくなってしまう方は少なくありませんが、治療によって少しずつ乗れる距離を伸ばしていくことで、多くの方が改善を実感しています。焦らず段階的に取り組むことが大切です。
Q. パニック発作と過呼吸(過換気症候群)は同じものですか?
過呼吸(過換気)は、パニック発作の際に現れる症状の一つです。呼吸が浅く速くなることで血液中の二酸化炭素濃度が下がり、手足のしびれやめまいといった症状が生じます。過換気そのものは単独で起こることもありますが、パニック障害の文脈では、強い不安や恐怖の症状の一部として過呼吸が現れることが多く見られます。
Q. 初診ではどのようなことを聞かれますか?
初診では、いつ頃からどのような症状が出ているか、発作の頻度や具体的な状況、これまでに受けた検査の結果、現在避けている場所や行動の有無、仕事や生活への影響などについて詳しくお伺いします。緊張される必要はありません。分かる範囲でお話しいただければ十分です。メモを準備してお越しいただくと、伝え忘れを防ぐことができます。

当院でのパニック障害の診療について

パニック障害は、正しい知識と適切な治療によって、発作への恐怖に振り回されずに日常生活を送れるようになることを十分に目指せる病気です。診療にあたっては、まず症状や発作が起きた経緯を丁寧にお伺いし、身体的な病気が隠れていないかを確認したうえで、お一人おひとりの状態やご希望に応じた治療方針を一緒に検討していきます。

「病院に行くべきか迷っている」「まずは話を聞いてほしい」という段階でも構いません。症状に心当たりのある方は、お気軽にご相談ください。パニック障害は、時間をかけて向き合えば必ず改善の兆しが見えてくる病気です。今抱えている不安や恐怖を、少しずつ手放していくためのお手伝いをさせていただきます。

まとめ

パニック障害は、脳の機能的な変化によって引き起こされる病気であり、本人の性格や気の持ちようが原因ではありません。突然の動悸や息苦しさ、強い恐怖感に繰り返し襲われる、発作が起きることへの不安から行動範囲が狭まっているといった場合は、一人で抱え込まず、専門医に相談することが回復への大切な一歩です。

薬物療法と精神療法を組み合わせた治療により、多くの方が症状の改善を実感しています。治療には一定の時間がかかることもありますが、焦らず段階的に取り組むことで、発作への不安なく日常生活を送れるようになることを目指せます。気になる症状がある方は、早めの受診をご検討ください。

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