こんなお悩みはありませんか?
- 体型や体重への強いこだわり・恐怖心が頭から離れない
- 太ることに対する強い不安があり、体重が減っても「まだ痩せなければ」と感じてしまう
- 食事がうまくコントロールできず、短時間で大量に食べてしまうことがある
- 食べたあとに強い罪悪感や自己嫌悪に襲われ、吐いたり下剤を使ったりしてしまう
- 空腹を感じているのに、限界まで食べるのを我慢し続けてしまう
- 1日に何度も体重計に乗り、わずかな増減で気分が大きく左右される
- 人と一緒に食事をすること(会食)に強い負担や恐怖を感じる
- 体重や食事のことで頭がいっぱいになり、仕事や学業・日常生活に支障が出ている
- 周囲から「痩せすぎ」「食べる量が心配」と指摘されても、素直に受け止められない
- 家族や友人に食事の様子を隠したり、一人で食べることを選んだりするようになった
- 「もっと痩せなければ」という気持ちが、頭から離れず苦しい
- 食べることへの罪悪感から、食後にネガティブな気持ちを引きずってしまう
- 自分の食行動を家族や友人に知られたくないと感じ、隠すようになった
- 体重の増減について、他人からの何気ない一言に強く傷ついてしまう
- ダイエットを始めてから、月経が止まった、または不規則になった
摂食障害(神経性やせ症・神経性過食症など)とは?
現代社会の美意識と摂食障害
現代社会における摂食障害(摂食症)は、単なる個人の意志や性格の問題ではなく、過度な「やせ美意識」や社会的なストレスが深く関わる、命に関わることもあるメンタルの問題です。
現代社会における背景と原因
やせ体型を礼賛する文化:メディアやSNSなどを通じて「細い身体こそ美しい」という偏った美意識が蔓延(まんえん)しています。
社会的・心理的ストレス:経済的な豊かさや飽食の時代の一方で、対人関係の困難、孤立、自己評価(自尊感情)の低下が発端となります。
完璧主義や焦燥感:真面目で努力家、何事も完璧にこなそうとする若い世代が、漠然とした不安を和らげる手段(機能)としてダイエットから陥ることが多い傾向にあります。
一つでも当てはまるものがあれば、それは「性格」や「気の持ちよう」の問題ではなく、専門的なサポートが必要なサインかもしれません。摂食障害は、ご本人が「まだ大丈夫」「病気というほどではない」と感じているうちに進行してしまうことが多い疾患です。少しでも気になる点があれば、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
摂食障害(神経性やせ症・神経性過食症など)とは?
摂食障害は、単なる「ダイエットの行き過ぎ」や「わがまま」「食習慣の問題」ではありません。食事の量や食べ方、体重・体型に対する認識に強い歪みが生じ、心と体の双方に深刻な影響を及ぼす精神疾患です。
背景には、心理的なストレスや自己肯定感の低さ、対人関係の悩み、環境の変化、完璧主義的な傾向など、さまざまな要因が複雑に絡み合っていることが一般的です。脳内の神経伝達物質のバランスの乱れも影響していると考えられています。
放置すると、低栄養による低血圧・無月経・脱水などの身体的な危険を伴うほか、強い自己嫌悪やうつ状態を引き起こすこともあります。ご本人は受診に抵抗を感じることも多いですが、ご家族からのご相談も含め、早期に専門的なアプローチを始めることが大切です。
「食べる」ことや体型・体重に関して、以下のような特徴が見られる場合、摂食障害の可能性があります。
【体重・体型への強いとらわれ】
- 太ることに対する異常な恐怖感があり、痩せていても「まだ太っている」と感じる
- 1日に何度も体重計に乗り、わずかな増減で気分が激しく上下してしまう
- 自分の体型や見た目で、自分の価値がすべて決まるように感じてしまう
- 鏡や写真に写る自分の姿を、実際よりも太って見えると感じる
【極端な食事制限(やせ症傾向)】
- 食事の量を大きく減らしたり、特定の食品しか口にしなくなったりする
- 空腹を感じているのに、限界まで食べるのを我慢し続けてしまう
- 周囲から「痩せすぎ」と心配されても、もっと痩せなければいけないと思い詰める
- 食事のカロリーや成分が常に気になり、外食や人との食事を避けるようになる
【過食・吐き出し・行動のコントロール(過食症傾向)】
- ストレスがたまると、一気に大量の食べ物を詰め込むように食べてしまう
- 食べ始めたら途中で止められず、自分でコントロールできない感覚がある
- 食後に罪悪感や激しい後悔に襲われ、意図的に吐いたり下剤を多用したりしてしまう
- 人目を忍んで隠れて食べたり、食べた後の形跡を隠したりしてしまう
摂食障害は誰にでも起こりうる疾患です
摂食障害というと、若い女性に特有の疾患というイメージを持たれる方も多いかもしれません。確かに思春期から青年期の女性に多く見られる傾向はありますが、近年では男性や中高年、幅広い年代の方にも見られることが分かってきています。
また、発症のきっかけも「痩せたい」という単純な願望だけとは限りません。受験や就職、失恋、職場や家庭でのストレス、心理的なトラウマなど、さまざまなきっかけから食行動に異常が生じることがあります。「自分には関係ない」と思わず、心当たりのある症状があれば、性別や年齢に関わらず一度相談してみることが大切です。
摂食障害の主な種類
摂食障害にはいくつかのタイプがあり、症状の現れ方も人によって異なります。代表的なものを紹介します。
神経性やせ症(神経性無食欲症)
体重増加への強い恐怖と、自分の体型・体重に対する認識の歪みを特徴とします。必要なエネルギー摂取を極端に制限し、年齢・性別・成長段階に対して有意に低い体重であるにもかかわらず、本人はそれを「太っている」と認識してしまうことが少なくありません。過度な運動や、食べたものを排出しようとする行動を伴うケースもあります。
神経性過食症(神経性大食症)
短時間のうちに、通常では考えられないほどの量を食べてしまう「過食エピソード」と、それに伴う「代償行動」(自己誘発性の嘔吐、下剤・利尿剤の乱用、絶食、過剰な運動など)を繰り返すことが特徴です。体重は標準範囲内であることが多く、外見からは気づかれにくい点も特徴の一つです。
過食性障害(むちゃ食い症)
神経性過食症と同様に過食エピソードを繰り返しますが、嘔吐や下剤の使用といった代償行動を伴わない点が異なります。その結果として体重が増加し、肥満につながることもあります。過食後の強い自己嫌悪や抑うつ気分を伴うことが多く見られます。
回避・制限性食物摂取症(ARFID)
体型や体重へのこだわりが主な動機ではなく、食べ物の見た目・食感・匂いへの強い拒否感や、過去に食事で苦しい経験をしたことへの恐怖などから、食べられる食品の種類や量が極端に限られてしまう状態です。子どもや発達特性のある方に見られることもあります。
神経性やせ症と神経性過食症の違い(比較)
| 項目 | 神経性やせ症 | 神経性過食症 |
|---|---|---|
| 体重 | 低体重であることが多い | 標準範囲であることが多い |
| 食行動の特徴 | 食事量の極端な制限が中心 | 過食エピソードを繰り返す |
| 代償行動 | 過剰な運動、絶食などを伴う場合がある | 嘔吐・下剤乱用などを伴うことが多い |
| 外見からの気づきやすさ | 体重減少により気づかれやすい | 体重が変化しにくく気づかれにくい |
| 本人の自覚 | 病気だという自覚を持ちにくい | 「おかしい」と感じつつ止められない苦しさがある |
このように、同じ摂食障害でもタイプによって現れ方は大きく異なります。「痩せていないから摂食障害ではない」と自己判断せず、食行動や心理面の特徴から総合的に捉えることが大切です。
年代・性別による特徴
摂食障害は思春期から青年期の女性に多いとされていますが、年代や性別によって特徴が異なる場合があります。
- 思春期の場合:成長期の栄養不足が身体発達に影響を及ぼす可能性があるため、特に早期の対応が重要です。ご家族の関わりが治療の大きな支えになります。
- 成人期の場合:仕事や結婚、出産など、ライフイベントの変化がきっかけとなることがあります。長年症状を抱えながら生活してきたケースもあり、生活への影響を踏まえた治療計画が必要です。
- 男性の場合:筋肉量や体型へのこだわりという形で症状が現れることもあり、「摂食障害は女性の病気」というイメージから、受診が遅れがちな傾向が指摘されています。
- 中高年の場合:更年期や家庭環境の変化などをきっかけに、成人期になって初めて症状が現れることもあります。
年代や性別にかかわらず、心当たりのある症状がある場合は、一度専門家に相談することをおすすめします。「自分の年代・性別では珍しいはずだから」という思い込みが、かえって受診のタイミングを遅らせてしまうこともあるため、注意が必要です。
タイプ間の移行について
摂食障害は、一つのタイプの症状が固定的に続くとは限りません。神経性やせ症として発症した方が、経過の中で過食のエピソードを伴うようになったり、逆に過食症の症状が落ち着いた後に食事制限が強まったりするなど、時間の経過とともに症状のタイプが移り変わることも珍しくありません。そのため、診断名だけにとらわれず、今現在のご本人の状態を丁寧に見ていくことが治療上重要になります。
摂食障害の原因
摂食障害は、単一の原因で発症するものではなく、複数の要因が重なり合って発症すると考えられています。
心理的要因
- 完璧主義的な性格傾向、自己肯定感の低さ
- 「痩せていることに価値がある」という思い込み
- ストレスやつらい感情を、食行動でコントロールしようとする心理
社会的・環境的要因
- SNSやメディアを通じた「痩せた体型」への強い理想化
- ダイエットのきっかけとなった、周囲からの体型に関する何気ない言葉
- 家庭内での過干渉、あるいは逆に無関心といった養育環境
- 受験や就職、失恋、引っ越しなど、大きな環境変化やライフイベント
生物学的要因
- セロトニンをはじめとする脳内神経伝達物質のバランスの乱れ
- 遺伝的な要因(家族内での発症傾向が指摘されています)
- 思春期におけるホルモンバランスの変化
これらの要因が複雑に絡み合うことで発症し、さらに低栄養状態そのものが脳の働きに影響を与え、症状を悪化・固定化させる悪循環を生むこともあります。空腹の状態が続くと、思考の柔軟性が失われて「食べる・食べない」という二択の考え方に陥りやすくなり、それがさらに食行動の異常を強めてしまうのです。この悪循環に本人の意志の力だけで対処するのは非常に困難であり、専門的な治療によって断ち切っていく必要があります。
摂食障害の症状
摂食障害の症状は、身体面・心理面・行動面のそれぞれに現れます。
身体面の症状
- 急激な体重減少、または体重の大きな変動
- 無月経、月経不順
- 立ちくらみ、めまい、低血圧
- 冷え、むくみ、産毛が濃くなる(うぶ毛密生)
- 便秘、腹部膨満感などの消化器症状
- 嘔吐を繰り返すことによる歯のエナメル質の摩耗、唾液腺の腫れ
- 倦怠感、集中力の低下
心理面の症状
- 体重・体型への強いとらわれと恐怖感
- 自己評価が体重や体型に過度に左右される
- 抑うつ気分、不安感、イライラの増加
- 自己嫌悪感、罪悪感の強さ
- 完璧主義的な思考、白黒思考(「少しでも食べたら失敗」など)
行動面の症状
- 食事の量や種類を極端に制限する
- 食事に関する儀式的な行動(食べ物を細かく刻む、食べる順番にこだわるなど)
- 過食と、それに続く代償行動(嘔吐、下剤乱用、過剰な運動など)
- 人前で食事をすることを避ける、会食を断るようになる
- 体重計に何度も乗る、あるいは逆に体重計を極端に避ける
- 食べ物を隠す、こっそり捨てるなどの行動
これらの症状は本人が自覚しにくく、また「隠したい」という気持ちから、周囲が気づいたときにはすでに症状が進行しているケースも少なくありません。特に、体重が標準範囲にある過食症や過食性障害の場合は、外見の変化が乏しいために「大丈夫だろう」と見過ごされやすく、ご本人が長期間一人で苦しみを抱え込んでしまう傾向があります。
よくある誤解
摂食障害については、誤解に基づくイメージが広まっていることも少なくありません。ここで代表的な誤解を整理しておきます。
「本人の意志が弱いだけ」という誤解
摂食障害は、単純な意志の強さの問題ではなく、脳の働きや心理的な要因が関わる医学的な疾患です。「頑張れば治る」というものではなく、専門的な治療が必要です。
「痩せていなければ摂食障害ではない」という誤解
過食症や過食性障害のように、体重が標準範囲、あるいはそれ以上であっても摂食障害と診断されるケースは多くあります。体重の数値だけで判断することはできません。
「若い女性だけの病気」という誤解
前述の通り、性別や年齢を問わず発症しうる疾患です。男性や中高年の方が「自分には関係ない」と受診が遅れてしまうケースも見られます。
「食べさせれば治る」という誤解
無理に食事を強要することは、ご本人の恐怖心や反発心を強め、かえって症状を悪化させたり、信頼関係を損ねたりすることがあります。食事量そのものよりも、その背景にある心理的な問題への対応が回復の鍵となります。
摂食障害が引き起こす合併症・リスク
摂食障害を放置すると、身体面・精神面の双方にさまざまなリスクが生じます。
身体的な合併症
- 低栄養状態による免疫力の低下、感染症へのかかりやすさ
- 電解質異常(低カリウム血症など)による不整脈のリスク
- 骨密度の低下、骨粗鬆症
- 無月経の長期化による将来的な妊孕性への影響
- 消化管機能の低下
- 重症化した場合の心機能への影響
精神的な合併症
- うつ病、不安障害の併発
- 強迫的な思考・行動の悪化
- 自己肯定感のさらなる低下
- アルコールや薬物への依存傾向
- 自傷行為や希死念慮を伴うケースもあります
社会生活への影響
- 学業や仕事への集中力低下、欠席・欠勤の増加
- 友人関係、家族関係の悪化・孤立
- 対人関係における自信喪失
摂食障害は「痩せているかどうか」だけで判断できるものではなく、過食症や過食性障害のように体重が標準範囲内、あるいは肥満傾向であっても、深刻な心身のリスクを抱えていることがあります。
摂食障害の経過と受診の目安
摂食障害は、発症初期には「ダイエットの延長」のように見えることが多く、本人も周囲も病気だと気づきにくい傾向があります。しかし、症状が進行するほど回復に時間がかかりやすくなるため、早期発見・早期対応が非常に重要です。
ご本人が気づきたいサイン
- 食事や体重のことを考える時間が、1日の大部分を占めるようになった
- 食事のコントロールが以前よりも難しくなっている実感がある
- 体調不良(めまい、倦怠感、月経不順など)が続いている
- 食事や体型に関する悩みで、学業・仕事・人間関係に支障が出ている
ご家族・周囲の方が気づきたいサイン
- 急激な体重の変化、極端な食事量の変化
- 食事の場を避けるようになった、一人で食べたがる
- トイレに頻繁に行くようになった、食後すぐにトイレに立つ
- 体調不良を訴える頻度が増えた
- 服装で体型を隠そうとするようになった
摂食障害は、ご本人が「病気だ」と認識しにくく、治療の必要性を感じにくい特徴があります。そのため、ご本人からの相談だけでなく、ご家族からのご相談も重要な入口となります。無理に食事を強制したり、体重について厳しく指摘したりすることは、かえって症状を悪化させる場合があるため、専門機関に相談しながら関わり方を考えていくことをおすすめします。
受診をためらってしまう理由とその向き合い方
摂食障害の症状を自覚していても、次のような理由から受診に踏み切れない方は少なくありません。
- 「病院に行くほどではない」と、症状を過小評価してしまう
- 治療によって「無理やり食べさせられる」「体重を強制的に増やされる」のではないかという不安
- 症状を誰かに知られることへの恥ずかしさや抵抗感
- 「今の状態(痩せていること、食行動をコントロールできていること)を手放したくない」という気持ち
これらの気持ちは、摂食障害という病気の特徴の一部でもあります。治療は、ご本人の意思を無視して食事を強制するものではなく、まずは今抱えている苦しさを共有し、少しずつ回復に向けた一歩を一緒に考えていくところから始まります。受診そのものが「治療のスタート」であり、いきなり大きな変化を求められるものではありませんので、不安を感じている方も、まずは相談という形で来院いただければと思います。
摂食障害に併発しやすい心の病気
摂食障害は、単独で現れるよりも、他の精神的な不調と併せて現れることが少なくありません。代表的なものを紹介します。
うつ病
食事や体型への強いとらわれが続くことで、気分の落ち込みや意欲の低下、興味・関心の減退といった抑うつ症状を伴うことがあります。低栄養状態そのものが気分の落ち込みを引き起こすこともあり、摂食障害とうつ病は相互に影響し合う関係にあります。
不安症・強迫症
「太ってしまうのではないか」という不安が慢性的に続いたり、食事に関する儀式的な行動(決まった順番で食べる、細かくカロリーを計算するなど)が強迫的な形をとったりすることがあります。
自尊感情の低下・対人関係の困難
自分に対する評価が体型や体重に強く結びついてしまうことで、自己肯定感が全般的に低下し、対人関係においても自信を持ちにくくなる傾向が見られます。
これらの併発症状がある場合、摂食障害の症状だけに焦点を当てるのではなく、全体的な心の状態を見ながら治療方針を組み立てていくことが重要です。
治療を受けることのメリット
「治療を受けたら、好きなものを食べられなくなるのでは」「体重管理を厳しく指導されるのでは」といった不安から、受診をためらう方も少なくありません。しかし、実際の治療は、ご本人を追い詰めるものではなく、食事や体型に対する苦しい思考のパターンから距離を置き、より自由に、楽に生活できるようになることを目指すものです。
治療を通じて得られる変化には、次のようなものがあります。
- 食事や体重に関する考えごとに費やす時間が減り、他のことに意識を向けやすくなる
- 体調不良(めまい、倦怠感、月経不順など)の改善が期待できる
- 気分の落ち込みや不安感が和らぎ、精神的に安定しやすくなる
- 家族や友人との関係が改善し、孤立感が軽減される
- 学業や仕事に、以前よりも前向きに取り組めるようになる
すべての変化がすぐに現れるわけではありませんが、治療を続けることで、少しずつ「食べること」への向き合い方が変わっていくケースは多く見られます。
ご家族が気をつけたい関わり方
摂食障害のご本人を支えるご家族にとって、日々の関わり方に悩むことは少なくありません。以下のポイントを意識していただくことで、ご本人の安心感につながりやすくなります。
- 体重や食事の量そのものについて、直接的に厳しく指摘することは避ける
- 「痩せた」「太った」といった見た目に関する評価的な言葉を控える
- ご本人の気持ちや、食事以外の悩みにも耳を傾ける姿勢を持つ
- ご本人を責めるのではなく、「一緒に治療に取り組んでいきたい」という姿勢を伝える
- ご家族だけで抱え込まず、早い段階で専門機関に相談する
- ご家族自身の心身の負担にも目を向け、必要であればご家族自身も相談を受ける
摂食障害の治療において、ご家族の関わり方は回復の重要な要素の一つです。とはいえ、正しい関わり方はご本人の状態によっても異なるため、自己判断で対応を続けるよりも、専門家のアドバイスを受けながら進めていくことをおすすめします。
摂食障害の治療法
摂食障害の治療は、身体面のケアと心理面のケアを並行して行うことが基本です。症状の程度や状態に応じて、以下のようなアプローチを組み合わせて進めていきます。
精神療法(心理療法)
- 認知行動療法:体型や体重に対する歪んだ認知、食行動のパターンに働きかけ、より現実的でバランスの取れた考え方を身につけていきます。
- 家族療法:特に思春期の患者様に有効とされ、ご家族が治療の協力者として関わる方法です。
- 対人関係療法:症状の背景にある対人関係上のストレスや悩みに焦点を当てて改善を図ります。
栄養面のサポート
管理栄養士等と連携しながら、極端な食事制限や過食のパターンを見直し、無理のないペースで規則的な食事リズムを取り戻していくサポートを行います。数値目標を性急に追うのではなく、心身の状態に合わせた段階的な取り組みが大切です。
薬物療法
摂食障害そのものを直接治す薬はありませんが、併発しているうつ状態や不安症状、強迫的な思考を和らげる目的で、抗うつ薬などが補助的に用いられることがあります。あくまで心理療法・栄養面のサポートと組み合わせた対症療法という位置づけです。
身体管理・内科的フォロー
低栄養や電解質異常など、身体面への影響が疑われる場合には、血液検査などによる定期的なモニタリングを行い、必要に応じて内科的な治療と連携します。
入院治療が必要なケース
体重減少が著しい場合や、身体的な合併症のリスクが高い場合には、入院による集中的な治療が必要となることもあります。その場合は、対応可能な医療機関と連携してご案内いたします。
回復までの期間について
摂食障害の回復には、一般的に長い時間がかかると言われています。症状の程度やこれまでの経過、周囲のサポート体制などによって個人差が大きく、数か月で改善が見られる方もいれば、数年単位で治療を続けていく方もいます。大切なのは、短期間での完治を焦らず、小さな変化を積み重ねながら、再発を防ぎつつ回復のペースを保っていくことです。治療の途中で症状が一時的に揺り戻すこともありますが、それも回復の過程の一部として捉え、根気強く取り組んでいくことが望まれます。
受診の流れ
初めて受診される方は、どのような流れで診察が進むのか不安に感じることも多いかと思います。一般的な流れの一例をご紹介します。
- 問診・カウンセリング:現在の食事の状況や体重の推移、心理的な悩みについて、じっくりとお話を伺います。
- 身体面の確認:必要に応じて、体重や血液検査などにより身体面の状態を確認します。
- 治療方針のご提案:症状の程度に応じて、通院での心理療法や栄養面のサポート、必要な場合は他機関との連携などをご提案します。
- 継続的なフォロー:定期的な通院を通じて、心身の状態を確認しながら治療を進めていきます。
初回の受診で、すべてを話す必要はありません。話したくないことは無理に話す必要がなく、ご本人のペースに合わせて、少しずつお話を伺いながら治療を進めていきますので、安心してご相談ください。付き添いのご家族が同席してのご相談も可能です。
よくあるご質問
- Q. 摂食障害かどうか、自分では判断がつきません。受診してもよいのでしょうか。
- 診断はご自身で行うものではなく、専門家が問診や検査を通じて総合的に判断するものです。「摂食障害かどうか分からない」という段階でのご相談も歓迎しています。
- Q. 本人が受診を嫌がっています。家族だけで相談することはできますか。
- はい、可能です。ご本人がまだ受診を望んでいない場合でも、ご家族からのご相談を通じて、今後の関わり方や受診のタイミングについて一緒に考えることができます。
- Q. 治療にはどのくらいの期間がかかりますか。
- 症状の程度や経過によって個人差が大きく、一概にはお伝えできません。焦らず、ご本人のペースに合わせて治療を継続していくことが大切です。
- Q. 家族関係が原因だと言われるのではないかと不安です。
- 摂食障害の原因は一つに特定できるものではなく、ご家族を責めるための治療ではありません。ご家族も含めた周囲の環境を、回復のための力に変えていくことを目指します。
当院でのサポートについて
摂食障害は、ご本人の「治りたい」という気持ちと、周囲の適切なサポートの両方があってこそ、回復に向かいやすくなる疾患です。当院では、精神科・心療内科としての専門的な視点から、症状の背景にある心理的な要因を丁寧にお伺いしながら、お一人おひとりの状態に合わせた治療方針をご提案しています。
診察では、体重や食事内容を一方的に管理・指導するのではなく、まずはご本人が抱えている不安や苦しさに寄り添うことを大切にしています。そのうえで、必要に応じて身体面の状態を確認しながら、心理面へのアプローチと生活面でのサポートを並行して進めていきます。ご本人の状態によっては、内科的な検査や他の専門機関との連携が必要になる場合もありますが、その際も治療の見通しを丁寧にご説明しながら進めてまいります。
また、プライバシーへの配慮にも努めており、周囲に知られたくないというお気持ちにも配慮した診療を心がけています。ご本人が安心して通院を続けられる環境づくりも、回復を支える大切な要素と考えています。
「これくらいで病院に行っていいのか分からない」「まだ大丈夫だと思う」と感じている段階でも、一度専門家にお話しいただくことで、今の状態を客観的に整理する助けになります。ご本人だけでなく、ご家族からのご相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
摂食障害は、体型や体重への強いとらわれ、食行動のコントロールの難しさを特徴とする精神疾患であり、「意志が弱いから」「わがままだから」といった個人の性格の問題ではありません。心理的要因、社会的要因、生物学的要因が複雑に絡み合って発症し、放置すると身体面・精神面の双方に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
「食べること」や「体型・体重」に関する悩みが日常生活に影響を及ぼしていると感じたら、それは早めに専門家へ相談すべきサインです。摂食障害は、性別や年齢を問わず誰にでも起こりうる疾患であり、決して珍しいものではありません。また、症状のタイプもやせ症傾向・過食症傾向とさまざまで、体重の数値だけでは判断できないケースも数多く存在します。
回復には時間がかかることも多いですが、心理療法や栄養面のサポート、必要に応じた薬物療法や身体管理を組み合わせることで、着実に改善へと向かうことができます。ご本人が「治療を受けてよかった」と感じられるよう、当院では一人ひとりの状態に寄り添った診療を行っています。
一人で抱え込まず、また「これくらいで相談していいのだろうか」とためらわず、まずはお気軽にご相談ください。ご本人からのご相談はもちろん、ご家族からのご相談もお待ちしております。